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医療現場におけるヒヤリハットとは?看護師が知っておきたい基礎知識・具体的事例・再発防止策をわかりやすく解説

2026.09.29

「もう少しで大変なことになっていた…」
「気づいてよかった!」
など、医療現場で働く中で「ヒヤリ」「ハッ」とした経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
ヒヤリハットは個人の失敗ではなく、医療安全を高めるための重要な情報資源です。

本記事では、ヒヤリハットの定義やインシデント・アクシデントとの違い、ハインリッヒの法則との関係、現場で実際に起きている事例と再発防止策までをわかりやすく解説します。

医療現場におけるヒヤリハットとは?

医療現場におけるヒヤリハットとは、医療行為の過程で誤りや危険な状況に気づき未然に防いだ、あるいは誤った行為が実施されたものの患者への実害が生じなかった出来事を指します。

ヒヤリハットとインシデントの違い 

ヒヤリハットとインシデントの違いは、端的にいえば「患者への影響が生じたかどうか」です。未然に防いだ、または実施されたが被害がなかったものがヒヤリハット、軽微な影響が生じたものがインシデントと区別されます。

アクシデントとの違いとは?

さらに、患者に実害(治療延長・後遺症・死亡など)が生じた場合はアクシデント(医療事故)に分類されます。ヒヤリハット・インシデント・アクシデントは重症度によって段階的に区別されており、それぞれ現場での報告方法や対応の優先度も異なります。

医療現場におけるヒヤリハット報告の役割と重要性

ヒヤリハット報告の最大の役割は、重大な医療事故を未然に防ぐことにあります。

そして、医療事故を未然に防ぐためにはヒヤリハットを「なかったこと」にしない仕組みづくりが最も重要と言えます。ヒヤリハットを積極的に報告することで、そのデータをもとにリスク管理を強化し、組織全体で重大事故の発生を未然に防ぐことができます。

また、報告された事例は医療機関内での分析・共有にとどまらず、日本医療機能評価機構(JCQHC)を通じて全国規模で収集・分析されています。

参考:厚生労働省(編).医療事故情報収集等事業について.

ハインリッヒの法則とは?

ハインリッヒの法則とは、1930年代にアメリカの安全技師ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが提唱した安全管理の考え方です。1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、その背景には300件のヒヤリハット事象があり、さらにその背景には数千もの不安全行動や不安全状態が存在するとされています。この比率から、「1:29:300」の比率とも呼ばれています。

ハインリッヒの法則を現場で活用する方法

ハインリッヒの法則を現場で活用するためには、ヒヤリハットを「何も起きなかった出来事」ではなく、無障害で終わった事故と捉えることが重要です。そのためには、ヒヤリハットの背後にある数千の不安全行動や状態の原因を分析し、仕組みを改善することでヒヤリハット自体を減らし、重大事故の予防につなげることが重要です。

医療現場のヒヤリ・ハット事例

日本医療機能評価機構(JCQHC)の「医療事故情報収集等事業 2024年年報」によると、2024年に報告されたヒヤリ・ハット事例(発生件数情報)の総数は約117万件にのぼります。

そのうち最も多いカテゴリは「薬剤」で全体の約31%を占め、次いで「療養上の世話」(約22%)、「ドレーン・チューブ」(約14%)と続きます。

一方、「治療・処置」のヒヤリ・ハット発生割合は約4.8%と低いものの、医療事故情報では31.8%と最多カテゴリです。この大きな乖離が示すのは、「治療・処置」はひとたびミスが起きると重大事故に直結しやすいカテゴリだということです。

報告件数が最多の「薬剤」とあわせて、それぞれの代表的な事例を確認していきましょう。

参考:日本医療機能評価機構(編).医療事故情報収集等事業 2024年年報.

・薬剤・投薬に関するヒヤリ・ハット事例
・処置・治療時に起きやすいヒヤリ・ハット事例

薬剤・投薬に関するヒヤリ・ハット事例

現場でよく報告される代表的な事例として、以下が挙げられます。

インスリンの単位・量の誤認
・インスリン製剤の単位数を読み間違えて過剰量を準備しそうになった
・食事が中止された患者にそのままインスリンの投与指示が出ていた

薬剤の取り違え・投与経路間違い
・外観や名称が類似した薬剤の取り違え
・中心静脈から投与すべき高濃度輸液を末梢静脈から投与しそうになった

退院処方・持参薬の確認ミス
・退院時の処方漏れによる内服中断
・持参薬を院内処方に切り替える際の処方量間違い

参考:日本医療機能評価機構(編).事例の概要ごとの医療安全情報 薬剤.

処置・治療時に起きやすいヒヤリ・ハット事例

医療安全情報で報告された「治療・処置」に関する代表的な事例は、以下の通りです。

誤認および取り違え 
・手術部位の左右を取り違えそうになった
・患者取り違えによる誤った処置・手術

経鼻栄養チューブの誤挿入 
・経鼻栄養チューブが気管や気管支に誤挿入されそうになった
・X線画像確認時に誤挿入を見落としそうになった

グリセリン浣腸・体位の不適切な実施 
・立位でのグリセリン浣腸による直腸損傷リスク
・禁忌患者への弾性ストッキング着用

参考:日本医療機能評価機構(編).事例の概要ごとの医療安全情報 治療・処置.

再発防止策

ヒヤリ・ハットを医療安全に活かすには、報告して終わりにせず、情報を分析・共有し、改善につなげる仕組みが重要です。ここでは、現場で実践できる具体的な取り組みを紹介していきます。

・ヒヤリハット報告書の書き方と記載のポイント
・収集した事例を分析・共有するサイクルの作り方
・事例から学ぶ再発防止策と組織的な改善推進

ヒヤリハット報告書の書き方と記載のポイント

ヒヤリハット報告書の書式は職場によって異なりますが、再発防止に役立てるには、以下の項目を簡潔に具体化して記載します。

・いつ・どこで・誰が:発生日時・場所・当事者の職種と経験年数
・何が起きたか:発生した事象の具体的な内容
・なぜ気づいたか:発見のきっかけと発見者
・患者への影響:実害の有無と影響度
・考えられる要因:知識・確認・連携・環境など複数の視点から記載

報告書は「個人の失敗の記録」ではなく、組織が学ぶための材料です。書きにくさがある場合は、匿名化や項目の簡略化などで報告の負担を下げる工夫も有効です。

収集した事例を分析・共有するサイクルの作り方

報告が蓄積されても、活用されなければ再発防止につながりません。定期的に「報告→分析→改善→評価」を回すため、以下を継続します。

・定期的なカンファレンスでの事例共有
・マニュアル・チェックリストの見直し
・改善策の効果測定・モニタリング
・現場へのフィードバック

事例から学ぶ再発防止策と組織的な改善推進

個別事例だけでなく、蓄積データから傾向を把握し、集中する時間帯・業務場面があれば、人員配置や業務フロー見直しの検討材料にします。

また、日本医療機能評価機構(JCQHC)の「医療安全情報」や年報など、全国で繰り返される事例を研修やKYTに取り入れると有効です。他施設の事例も自施設の課題として捉え、組織全体で安全意識を維持することが未然防止につながります。

まとめ

ヒヤリハットは、重大な医療事故を未然に防ぐための大切なシグナルです。日常業務の中で感じた小さな気づきを記録・共有し、組織全体で分析・改善につなげることが、医療安全の土台となります。
現場の一人ひとりが報告することの意義を理解し、医療現場の安全文化を育てていきましょう!

参考:

1)アステッキホールディングス株式会社(編).医療マネジメント認定士 公式テキスト.アステッキホールディングス株式会社.
2)ジュガール(編). 医療現場でのヒヤリハットとは?具体事例と医療事故を防ぐ効果的な対策について解説!.2026.
3)ジョブメドレー(編). ヒヤリハットとは?医療・介護・保育の現場で使える報告書の書き方・例文を紹介.2025.
4) 厚生労働省(編).医療事故情報収集等事業について.
5)日本医療機能評価機構(編).医療事故情報収集等事業 2024年年報.
6)日本医療機能評価機構(編).事例の概要ごとの医療安全情報 薬剤.
7)日本医療機能評価機構(編).事例の概要ごとの医療安全情報 治療・処置.

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