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Team STEPPS(チームステップス)とは?4つのスキルと導入の注意点を解説
2026.03.18
医療現場において、「伝えたはず」「分かっていると思っていた」と感じた経験はないでしょうか?
小さな認識のズレや遠慮が重なり、思わぬヒヤリ・ハットにつながることもあります。
医療安全を個人の努力に任せず、チームで高める方法がTeam STEPPS(チームステップス)です。
「チームステップスってなに?」「現場が忙しい中で本当に導入できるの?」
そう感じている方に向けて、本記事では、チームステップスの基本概念からチーム構成、4つのコアスキル、具体的なツール、導入を進める際の注意点などを分かりやすく解説します!
Contents
Team STEPPS(チームステップス)とは?
チームステップスとは、Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safetyの略称で、医療現場におけるチームワークとコミュニケーションを改善し、医療チームのパフォーマンスと患者安全を向上させるための包括的なプログラムのことです。アメリカ国防総省と医療研究品質局(AHRQ)が共同で開発し、科学的根拠に基づいて医療従事者間の協力を強化することを目的としています。
特徴は、理論だけでなく、現場で活用できる具体的なツールや行動指針が体系化されている点です。ブリーフィング、ハンドオフ、CUSなど、日常業務の中で実践しやすい方法が多く含まれています。
Team STEPPS(チームステップス)のチーム構成は?
チームステップスにおけるチーム構成員は、以下の4つの分類で構成されます。
・患者さん
・コアチーム(担当医・看護師・非常時対策チームなど)
・調整チーム、補助的支援チーム(病棟師長・技師長・助手など)
・管理・運営部門(事務・看護部長・病院長など)
チームステップスでは、現場で働く医療従事者だけではなく、患者さんの気づきや声もチーム医療の重要な要素として捉えている点が特徴です。ここでは、チームメンバーそれぞれの役割・特徴を解説していきます。
患者さん
・チームステップスでは、患者さんをピラミッドのトップとして位置づける
・症状の変化や不安の発信は、重要な状況モニタリング情報となる
・患者さん・家族の声を共有することが医療安全の向上につながる
コアチーム(担当医・看護師・非常時対策チームなど)
・患者さんの診療・ケアを直接担う医療の最前線
・日常診療から急変・非常時対応までを担当する
・正確な情報共有と迅速な判断がチーム医療の質と安全を左右する
調整チーム・補助的支援チーム(病棟師長・技師長・助手など)
・コアチームが円滑に機能するための業務調整・環境整備を担う
・人員配置や機器、システム面での支援を行う
・現場の負担やリスクを軽減し、医療安全を支える役割を持つ
管理・運営部門(事務・看護部長・病院長など)
・組織としての方針策定やルール整備を行う
・教育体制や安全推進の仕組みを構築する
・チームステップスを一時的な施策ではなく、安全文化として定着させる役割を担う
Team STEPPS(チームステップス)の4つのコアスキル
Team STEPPSでは、チームワークを高めるために、以下の4つのコアスキルを習得して継続的に実践することが求められます。
・リーダーシップ
・状況モニタリング
・相互支援(相互サポート)
・コミュニケーション
ここでは、各コアスキルの詳細や活用される手法やツールについて解説していきます。
リーダーシップとは?
リーダーシップとは、チームが目標に向かって安全かつ効率的に進むために方向性を示し、全体を導く役割です。リーダーはチーム活動を調整し、メンバー全員が力を発揮できる環境を整えるとともに、状況に応じて適切な判断と情報共有を行います。
リーダーシップの具体的な実践方法として以下の3つが挙げられます。
・ブリーフィング
・デブリーフィング
・ハドル(途中協議)
ブリーフィング(事前の打ち合わせ)
ブリーフィングとは、業務や処置を開始する前に、目標や役割分担、注意点を共有する場のことです。
あらかじめ認識をそろえることで、見落としや混乱を防ぎます。
デブリーフィング(振り返り)
デブリーフィングとは、業務終了後に実施する振り返りの時間のことです。
うまくいった点や改善点を共有し、次の実践につなげることで、チーム全体の学習と成長を促します。
ハドル(途中協議)
ハドルとは、業務中に状況の変化が生じた際、短時間で集まり情報を共有するミーティングのことです。
課題やリスクを迅速に確認し、必要な対応をその場で調整します。ブリーフィングは全員が手を止めて行うのに対し、ハドルは立ち話的に臨時の状況確認や調整を行うものと位置付けられています。
状況モニタリングとは?
状況モニタリングとは、チーム全員が患者や業務の現状を把握し、変化に気づくスキルを指します。問題が大きくなる前に対応するためには、個々の気づきを共有し、チーム内で「メンタルモデル(状況に対する共通認識)」をそろえることが重要です。
状況モニタリングの実施における代表的な手法として以下の3つが挙げられます。
・クロスモニタリング
・STEP
・I’M SAFEチェックリスト
クロスモニタリング
メンバー同士が互いの業務や判断をさりげなく確認し合う仕組みです。
一人では気づきにくいミスや見落としをチームで補い合うことで、エラーの発生を防ぎます。
STEP
状況を整理するためのチェックポイントで、チーム全体の状況認識をそろえるために用いられます。
S(Status of the patient:患者の状態)
例:バイタルサインが変動し、呼吸状態が悪化しています。
T(Team members:チームメンバーの状況)
例:処置対応中で人手が不足しています。
E(Environment:環境)
例:モニターアラームが頻回に鳴り、慌ただしい状況です。
P(Progress:進行状況)
例:検査結果待ちで、治療方針の決定は保留中です。
この4つの視点を定期的に確認することで、状況の変化に迅速に対応できます。
I’M SAFEチェックリスト
自分自身のコンディションを確認するためのセルフチェックです。
I(Illness:健康状態)
M(Medication:服薬)
S(Stress:ストレス)
A(Alcohol and drugs:アルコール・薬物)
F(Fatigue:疲労)
E(Eating and elimination:食事・排泄)
各項目を点検し、安全に業務を遂行できる状態かを確認します。
相互支援(相互サポート)とは?
相互支援とは、チームメンバーが互いに助け合い、負担を分担する行動を指します。業務が逼迫しているメンバーを支援したり、タスクを補完し合ったりすることに加え、「助かりました」「ありがとう」といったポジティブなフィードバックも重要な要素です。
チームステップスの特徴は、相互支援を個人の気配りや善意に任せるのではなく、誰もが実践できる具体的な行動として体系化している点にあります。相互支援で用いられる代表的な手法が以下の3つです。
・CUS(カス)
・DESCスクリプト
・2回チャレンジ(Two-Challenge Rule)
CUS(カス)
CUSは、懸念や危険を段階的に伝えるための共通言語です。
C(Concerned:懸念しています)
U(Uncomfortable:不安・違和感があります)
S(Safety issue:安全上の問題です)
の順に強度を高めて伝えることで、感情的にならずに安全上の問題を明確に共有できます。相手も「安全に関わる重要なサイン」として受け止めやすくなります。
DESCスクリプト
DESCスクリプトは、対立が生じそうな場面で建設的に意見を伝えるための方法です。
D(Describe:事実を述べる)
E(Express:自分の考えや感情を伝える)
S(Suggest:具体的な提案をする)
C(Consequences:結果を共有する)
という流れで整理して伝えることで、感情的な対立を避けながら問題解決を図ります。
2回チャレンジ(Two-Challenge Rule)
安全上の懸念を伝えても相手に十分に伝わらない場合、少なくとも2回は明確に意思表示を行うというルールです。それでも改善されない場合は、さらにリーダーや管理者へエスカレーションすることが推奨されます。沈黙を防ぎ、患者安全を最優先にするための仕組みです。
コミュニケーションとは?
コミュニケーションはチームステップスで中心的なスキルであり、チームが上手く回っていくためには効果的な情報共有が不可欠です。しかし、医療現場では多忙な状況下で、情報の受け渡しに不備が生じる「コミュニケーションエラー」が、重大な医療事故の引き金となることが少なくありません。正確な情報共有を組織の文化として根付かせるためには、個人の能力に頼るのではなく、誰がいつ使っても同じ効果が得られる標準化されたツールの活用が有効です。
コミュニケーションエラーを防ぎ、現場の情報共有を円滑にするための代表的なコミュニケーション手法として以下の4つが挙げられます。
・SBAR(エスバー)
・コールアウト
・チェックバック
・ハンドオフ(I PASS The BATON)
SBAR(エスバー)
状況 (Situation)、背景 (Background)、評価 (Assessment)、提案 (Recommendation) の順で伝える報告フォーマット。
緊急時の医師への報告や診療科間の連携を簡潔かつ正確にします。
コールアウト
チーム全体に貴重な情報を即座に共有するためのコミュニケーション手法。
特に緊急時に用いられ、状況を明確にし、全員が次に取るべき行動を瞬時に把握できるようにします。
チェックバック
指示内容を復唱し、発信者がそれを承認するプロセス。
確認を徹底することで、聞き間違いや思い込みによるミスを防ぐ効果があります。
ハンドオフ(I PASS The BATON)
ハンドオフとは、勤務交代や診療科間の移動時に行われる「引き継ぎ」のことです。
情報の抜け漏れは医療事故に直結するため、チームステップスではI PASS the BATONという10項目のチェックリスト活用を推奨しています。
・I(Introduction): 自己紹介とチーム内での役割の紹介
・P(Patient): 患者さんの氏名、年齢、性別、所在などの基本情報
・A(Assessment): 現在の診断、症状、バイタルサインの評価
・S(Situation): 現在の状況、変化の兆候、不測の事態への懸念
・S(Safety): 安全上の懸念事項(アレルギー、転倒リスク、見守りの必要性など)
・the: (接続詞)
・B(Background): 既往歴、服薬状況、家族歴などの背景
・A(Actions): 実施した処置、現在進行中の対応
・T(Timing): 緊急レベル、優先順位、次に行うべき処置のスケジュール
・O(Ownership): 責任の所在(誰が担当を引き継ぐか)の明確化
・N(Next): 今後起こり得ること、治療プラン
このツールと前述のチェックバックをセットで行うことで、情報の正確性を担保し、医療現場におけるコミュニケーションエラーを最小限に抑える効果があります。
Team STEPPS(チームステップス)導入のための注意点
チームステップスの導入においては、組織全体で目的を共有し、継続的に支援する体制を整えることが重要です。また、新人研修や医療安全研修の場で一度トレーニングを実施するだけでは、十分な定着は期待できません。日常業務の中で繰り返し実践できるよう、定期的なフォローアップや振り返りの機会を設けることが求められます。
チームステップスを一過性で終わらせないためには、組織的な支援と継続的な実践が鍵と言えるでしょう。
まとめ
チームステップスは、リーダーシップ・状況モニタリング・相互サポート・コミュニケーションの4つのコアスキルを基盤に、SBARやCUSなどの標準化ツールを活用して医療安全とチームパフォーマンスの向上を目指す包括的プログラムです。患者さんを含めたチーム全体で共通認識を持ち、継続的に実践することが医療安全文化の醸成につながります。
自施設の現状に合わせて取り入れ、より安全で質の高い医療提供体制の構築につなげていきましょう。
参考:
1)アステッキホールディングス株式会社(編).医療マネジメント認定士 公式テキスト.アステッキホールディングス株式会社.
2)マイナビDOCTOR(編). チームステップスとは?医療安全文化を高める実践方法を徹底解説.2024.
3)ドクタービジョン+(編).【コミュニケーションエラーを防ぐには】vol.2 Team STEPPS®を知っていますか?.2023.
4)レジリエントメディカル(編). 【医療安全】チームステップスとは~その意味と実践事例.
本記事で紹介したチームステップスの導入や、組織的な医療安全文化の醸成には、現場を俯瞰して導くマネジメント力が不可欠です。
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