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医療安全における「RCA」とは?根本原因分析の手順と事例を徹底解説!

2026.04.24

医療現場において、「事故の報告書を書いても結局『注意徹底』で終わってしまう…」と無力感を感じた経験はないでしょうか?
小さなヒヤリハットやインシデントを個人の責任だけで終わらせず、効果的な再発防止策を立てる手法RCA(根本原因分析)です。

「RCAという言葉は聞いたことがあるけれど、実際に何をするのか分からない」
「研修で学んだものの、現場でどう活用すればよいのか迷っている」
そう感じている方に向けて、本記事では、RCAの基本概念から具体的な6つの実施手順、転倒事故の事例を用いた分析モデル、再発防止策を立てる際のポイントなどを分かりやすく解説します!

RCA(根本原因分析)とは?

RCA(Root Cause Analysis)とは、医療事故やインシデントが発生した際に、その根本的な原因を特定し、再発防止策を講じるための手法です。「RCA分析」とも呼ばれています。
表面的な問題解決に留まらず、背後にあるシステム的な要因やプロセスの欠陥を明らかにすることを目的としています。

なぜ医療現場でRCA(根本原因分析)が必要?

結論から言えば、個人の注意不足を責めるだけでは、同じ事故が形を変えて何度も繰り返されてしまうからです。
アクシデントの多くは単独のミスではなく、背後にある環境や仕組みといった複数の要因が連鎖して発生します。
本質的な解決のためにRCAが重要な理由としては、以下のようなことが挙げられます。

・個人の責任に偏らない客観的な分析ができる
・体系化された方法により、一定の精度を維持できる
・異なる職種のメンバーが参加することで、多職種連携が強化される

RCA(根本原因分析)の実施手順【6ステップで解説】

RCAは体系的な手順に沿って進めることで、より効果的な分析が可能になります。
事例を用いて、実施手順を以下の6つのステップに分けて解説していきます。

・問題の特定
・情報の収集と分析
・予防処置の分析
・根本原因の特定
・再発防止策の検討
・実施と評価

事例
・80歳代、入院初日の夜間、自室にて転倒
・認知機能・歩行能力低下により入院時の転倒転落アセスメントでは高リスク判定だったため、離床センサーを使用していた。

問題特定

まず、分析の対象となる事例を選定したら、インシデントの概要を把握し何が起きたかを明確にすることから始めます。
主観を排除し、事実のみを端的に記載するのがポイントです。

「転倒リスクの高い患者が夜間トイレへ向かう途中で転倒した。」

情報の収集と分析

次は情報の収集と分析です。
発生したインシデントの問題を深く理解するためには、詳細な情報収集と分析が重要となってきます。
「いつ・どこで・誰が」をベースに、関与したスタッフへのヒアリングや現場環境の確認、電子カルテや看護記録も網羅的に調査します。

いつ:〇月□日 午前3時
どこで:〇〇病棟 □□号室 ベッドサイド
誰が:物音を聞いた夜勤帯の看護師Aが発見

電子カルテ・看護記録より:
・23時頃、看護師Bがトイレ介助を行なった。
・離床センサー(マットセンサー)使用中だったが、転倒時は位置がズレた状態で離床を検知できていなかった。

予防処置の分析

ここでは、これまでに講じられていたインシデントやアクシデントの予防処置が、実際にどの程度機能していたのかを検証します。この分析によって、既存の予防処置における欠陥や改善すべき点を明確にできます。

分析のポイント
・手順や業務プロセスが現場で適切に運用されていたか
・予防処置が事故防止に十分な効果を発揮していたか

予防措置結果
離床センサー使用正しく機能していなかった
1時間ごとの夜間巡視できていた

根本原因の特定

根本原因の特定は、RCAを実施する過程において最も重要なステップです。
以下の3つのフレームワークを活用して、問題の深層にある要因を明らかにしていきます。

・出来事流れ図
・なぜなぜ分析
・因果関係図(フィッシュボーン図)

出来事流れ図

問題のプロセスを時系列で整理する手法です。
まずインシデントに関わる全ての出来事を洗い出し、それらを時系列に並べ、主要な出来事や決定点を明確にしていきます。

出来事流れ図

 入院時:
 ・認知機能・歩行能力低下により入院時の転倒転落アセスメントでは高リスク判定
 ・離床センサー使用開始
 ↓
 23時頃:
 看護師Bがトイレ介助を実施。離床センサーの位置確認は行わず。
 ↓
 3時頃: 事故発生!
 物音を聞いた看護師Aがベッドサイド付近にて転倒している患者を発見。
 離床センサーで検知できていなかった。

次に「なぜなぜ分析」で根本原因を特定していきます。

なぜなぜ分析

なぜなぜ分析とは、インシデントに対して「なぜ?」という問いを繰り返し、表面的な原因を深堀りすることで根本原因を特定する手法です。
インシデントが発生した背景を複数の観点から掘り下げて検討することで、最終的な解決策を導き出す道筋を明らかにしていきます

図1:なぜなぜ分析

因果関係図(フィッシュボーン図)

問題の原因と結果を視覚的に整理する手法です。中心線を背骨に見立て、原因を「魚の骨(フィッシュボーン)」のように分岐させて分類させます。
問題の原因を漏れなく整理するために「4M1E」という分類の枠組みを用いることが一般的です。
「4M1E」とは、原因を体系的に整理するための視点であり、Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)・Environment(環境) の5つの要素から問題を分析します。

4M1E
Man(人):スタッフのスキルや知識、コミュニケーション不足
Machine(機械):設備やシステムの不具合、メンテナンス不足
Material(材料):薬剤や医療資材の質や状態
Method(方法):手順やプロセスの設計や運用
Environment(環境):作業環境や職場文化、組織的条件

図:因果関係図(フィッシュボーン図)

3つのフレームワークを実施したことで、今回の転倒事故の根本原因を明らかにすることができました。

考えられる根本原因
・離床センサーの作動確認を習慣化させるチェック体制の不十分だった可能性

因果関係を明確にすることで、問題の原因を包括的に分析し、根本的な解決策を導き出すことが可能となります。

再発防止策の検討

特定された根本原因に対処するための具体的な再発防止策を検討する過程です。この過程では「SMART」基準を活用することが推奨されています。
SMART基準とは、対策を実効性のあるものにするために、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限が明確)の5つの視点から整理する枠組みのことです。

SMART基準
S(Specific:具体的):何を改善するのかを明確にし、行動レベルで示します。
今回だと、
「介助後・巡視時にセンサー位置と作動状況を確認する手順を徹底化し、チェック表を作る」

M(Measurable:測定可能):実施状況や効果を評価できる指標を設定します。
今回だと、
「チェックリスト記入率、未確認件数、センサー関連インシデント数の月次評価」

A(Achievable:達成可能):現場の人員配置や業務量を踏まえ、無理なく実践できる内容にします。今回だと、
「既存巡視業務へ確認項目を追加することで実施可能」

R(Relevant:関連性):根本原因に直接関連し、再発防止という目的に合致している対策であるかを確認します。
今回だと、
「離床の早期察知と転倒予防に直結する重要対策である」

T(Time-bound:期限が明確)いつまでに実施・評価するのか期限を設定し、改善活動を継続的に進められるようにします。
今回だと、
「運用開始後1か月以内に遵守率を評価し、必要に応じて改善する」

SMART基準に沿って検討された再発防止策は、現場での実践性が高まり、定期的なフォローアップやモニタリング体制の継続にもつながります

実施と評価

策定された再発防止策を実施し、その効果を評価する過程です。一時的な対策で終わらないために、定期的なモニタリングを行い、対策が期待通りの効果を発揮しているか、確認が必要です。

モニタリングの主な視点

現場での実践状況の観察
:手順が守られているか、運用に無理がないか
有効性評価のための定量的なデータ収集、分析
:チェック表に漏れがないか
対策効果の判定
:同じような事故が発生していないか
継続および改善の検討
:医療安全委員会・カンファレンスで検討できているか

対策の有効性が十分でない場合や新たな課題が明らかになった場合には、内容の修正や強化を行います。こうした評価と改善のサイクルを継続することで、再発防止策は現場に定着し、医療安全の向上へとつながっていきます。

まとめ

RCA分析は、医療現場のインシデントを個人の責任として追及するのではなく、組織のシステム的な欠陥として捉え改善するための重要な手法です。出来事流れ図やなぜなぜ分析などのフレームワークを用い、多職種で根本原因を深掘りすることで、実効性の高い再発防止策を導き出せます。患者の安全を守るため、日々の報告を学びの機会に変えるRCA分析の取り組みを推進しましょう。

参考:

1)アステッキホールディングス株式会社(編).医療マネジメント認定士 公式テキスト.アステッキホールディングス株式会社.
2)レジリエントメディカル(編). 【医療安全】RCA分析 インシデントの分析に有効な手法.
3)Lychee Redmine編). RCA分析とは?根本原因の特定方法や効果的に行うコツ、おすすめのツールも紹介.2025.

「難しい手法だな」と感じた方もいるかもしれませんが、こうした分析をリードできる人が一人いるだけで、現場の安心感はぐっと高まります。
そんな「医療現場の頼れる司令塔」を目指せるのが、医療マネジメント認定士です。現場の課題を解決し、信頼されるマネジメントのプロを目指してみませんか?

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