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心理的安全性とは?看護チームの成長を支える本当の意味と高め方を解説
2026.10.22
看護師として経験を重ね、主任やリーダーを任されるようになると、日々の業務に加えて、スタッフの育成やチームづくりについて考える機会も増えてくるのではないでしょうか。
そんな中、チームマネジメントに関わる言葉として耳にするのが「心理的安全性」です。
心理的安全性という言葉からは、「安心して働ける職場」や「お互いに優しく接する環境」といったイメージを持つかもしれません。しかし、実は経営学における心理的安全性の定義は、少し違っています。
今回は、この心理的安全性について、学術的な研究をもとに詳しく見ていきたいと思います。
Contents
心理的安全性とは?
心理的安全性(Psychological Safety)とは、ハーバード大学ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン先生が1999年に発表した論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」(以下、Edmondson(1999))で提唱した概念です。
この論文において、エドモンドソン先生は、心理的安全性を次のように定義しています。
チームの心理的安全性とは、このチームでは対人関係上のリスクをとっても安全であるという共有された信念として定義される。
(中略)
発言をしても恥をかかされたり、拒絶されたり、罰せられたりしないという安心感を指している。
(Edmondson(1999)より筆者翻訳)
心理的安全性は、「職場に受け入れられていること」や「みんなが仲の良い快適な職場」といった意味で使われることも多いですね。
しかし、エドモンドソン先生の定義を読むと、心理的安全性は、本来リスクをとることが前提となる概念です。
例えば、周囲と異なる意見を伝えたり、自分の分からないことを素直に質問したりすることには、少なからず勇気が必要です。
つまり、心理的安全性とは、単なる居心地の良さや、なれ合いを表す言葉ではありません。
常にリスクや挑戦が求められる職場環境において、安心して発言し、行動できることを意味しています。
さらに忘れてはならないのは、この論文がチームの学習とパフォーマンスに関する研究であるという点です。
心理的安全性は何のためにあるのでしょうか。
それは、常に挑戦が求められる職場において、チームが学習を通じて成果を高めるためにあるものなのです。
こうして考えると、「心理的安全性」という言葉の印象が少し変わってきませんか?
単にスタッフが安心して働ける環境をつくるだけでなく、チームの成長を支えるための重要な考え方なのです。
心理的安全性があるチームで起こること
さて、Edmondson(1999)では、心理的安全性がチームの学習行動を支え、パフォーマンスにも関係することが示されています。
その関係を、次の3つの段階で考えてみましょう。
- 1. 安心感がある(心理的安全性)
メンバー同士がお互いを尊重し合い、「こんなことを言ったら怒られるかな」「能力がないと思われるかな」といった人間関係の不安や恐怖を感じずに発言できる状態です。
- 2. どんどん挑戦・質問ができる(学習行動)
安心できる環境だからこそ、「失敗してしまいました」「ここを教えてください」「新しいやり方を試してみませんか?」と素直に発言し、行動できるようになります。
- 3. 結果的に仕事の成果が出る(パフォーマンス)
問題が隠されず、チーム全体で試行錯誤しながら改善していくことで、最終的に仕事の成果を高めることにつながります。
つまり、お互いの失敗を責め合ったり、意見を言うことをためらったりするチームよりも、一人ひとりの考えを尊重し、「失敗からみんなで学ぼう」「新しいことにも挑戦してみよう」と言い合えるチームの方が、結果的に強いチームになるということです。
これは、私たちも日々の仕事の中で感覚的には理解していることかもしれません。
そうしたチームのあり方を、心理的安全性という概念を用いて研究したのが、Edmondson(1999)なのです。
チームの心理的安全性を高めるリーダーの振る舞い
では、心理的安全性を高めるためには、具体的にどのようなことが必要なのでしょうか。
ここでは、チームのリーダーに着目して考えていきます。
主任やリーダーとしてスタッフと関わる際にも、参考になる考え方です。
1)リーダーが支援的である
Edmondson(1999)では、リーダーが支援的で、メンバーの学びを支える姿勢を持ち、質問や異なる意見に対して防衛的にならずに対応することが大切だとされています。
少し分かりにくいかもしれませんね。
例えば、あなたがリーダーに「この方針は見直した方がよいのではないでしょうか」と、少し言いにくい意見を伝えたとします。
そのとき、「もう決まったことだから、とりあえずやって」とか「私の判断に文句があるのか」と一方的に言われたらどうでしょうか。
「言わなければよかった」「面倒な人だと思われたかもしれない」と感じてしまいますよね。そう感じると、問題提起やミスの共有といった、チームの学習につながる行動は起こりにくくなってしまいます。
逆に、「そう考えた理由を聞かせて」「どんなリスクがあると思う?」と向き合ってもらえたら、どうでしょうか。
たとえ自分の意見が採用されなかったとしても、話を聞いてもらえたことで納得感が生まれ、発言してよかったと思えるのではないでしょうか。
リーダーとして大切なのは、メンバーの意見をすべて受け入れることではなく、意見や疑問を安心して伝えられるようにすることなのです。
2)リーダーがお手本になる
ここでいう「お手本」とは、何でもそつなくこなす完璧な人になる、という意味ではありません。
リーダー自身が、率先して学習行動のお手本を示すことが大切だということです。
「こんな失敗をしてしまった」「ここが分からないから教えて」とリーダー自らがオープンにすることで、このチームでは学ぶための発言や挑戦が歓迎されることを、行動で示すことになります。
その姿勢は、少しずつチームのメンバーにも広がっていきます。
何でも知っているふりをしたり、ミスを隠したりする人よりも、自分の課題を素直に認め、学ぼうとする人の方が信頼できるのではないでしょうか。
心理的安全性を高めるリーダーのあり方については、後年、Nembhard & Edmondson(2006)においても議論がされています。
この研究では、新生児集中治療室に勤めるスタッフ1,440名を対象に調査が行われました。
その結果、医師や看護師などの専門性による階層が存在する組織では、リーダーがメンバーの意見や提案を積極的に求め、発言を歓迎する姿勢を示すことが、心理的安全性の向上につながることが明らかになりました。
医療現場のように、専門職や経験年数、役職などによる立場の違いがある環境では、メンバーの側から気軽に発言することが難しい場合もあります。
そのため、リーダーの側から積極的に声をかけ、意見を求め、それを受け止める姿勢を示すことが重要になります。
このようなリーダーのあり方は、「インクルーシブ・リーダーシップ」と呼ばれています。
まとめ
考え、挑戦すること。
挑戦には楽しいこともありますが、厳しさやしんどさも伴います。
なぜなら、挑戦の過程では、失敗や分からないこと、自分の未熟さに向き合うことの連続だからです。
それは、看護師として経験を重ね、リーダーとして新たな役割を担う中でも、感じることがあるのではないでしょうか。
だからこそ、そうしたことを隠したり恐れたりするのではなく、チームで共有しながら学んでいける環境が大切なのだと思います。
少し背伸びした挑戦をして、うまくいったり失敗したりしながら、これまでできなかったことができるようになる。
厳しさやしんどさがあるからこそ、楽しさがあり、成長があるのではないでしょうか。
心理的安全性とは、単に居心地の良い職場をつくるためのものではありません。挑戦と学習を支え、一人ひとりとチームが成長していくための土台なのです。
主任やリーダーとしてチームづくりに関わる中でも、こうした心理的安全性の本来の意味を理解することが、日々のマネジメントを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
参考文献
- ・Edmondson, A. C. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
- ・Nembhard, I. M., & Edmondson, A. C. (2006). Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams. Journal of Organizational Behavior, 27(7), 941–966.










