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医療現場におけるコンフリクトマネジメントとは?対立が起こる原因と解決に向けた対応を解説
2026.10.20
医療現場では、医師・看護師・リハビリテーション職・薬剤師・医療ソーシャルワーカー・介護職・事務職など、異なる専門性を持つ職種が協働しています。それぞれが担う役割や責任・経験・価値観・患者様の捉え方が異なるため、治療方針・ケアの方法・業務分担・患者様や家族様への対応などについて意見の違いが生じ、悩んだことはありませんか?
この対立は必ずしも組織にとって悪いものばかりではありません。異なる意見が出ることで、見落としていたリスクや課題が明らかになり、より良い意思決定につながる場合があります。一方で、対立を放置すると、不信感やコミュニケーション不足、心理的安全性の低下、チームワークの悪化を招き、結果として医療安全や患者支援にも影響する可能性があります。
そこで今回は、コンフリクトマネジメントの考え方について記載していきます。
Contents
コンフリクトマネジメントとは?
コンフリクトとは
コンフリクトとは(複数の)人や組織の間で、目的・価値観・認識・利害・感情などが一致せず、意見や行動に対立が生じている状態を指します。医療現場では、関係者の多くが「患者にとってより良い医療を提供したい」という共通の目的を持っていても、その目的を実現する方法や優先順位が異なることでコンフリクトが生じます。
コンフリクトマネジメントとは
コンフリクトマネジメントでは対立をなくすことだけを目的とせず、対立の原因を把握し、関係者間の対話を通して問題を整理し、解決策を検討し、必要に応じて業務や組織の仕組みを改善していく取り組みです。
特に医療現場では、「誰が正しいか」という二者択一で考えるのではなく、事実・認識・感情・役割・患者様の希望などを整理することが重要です。リーダーは対立するいずれかの意見に安易に偏るのではなく、チーム全体を共通目標へ導く役割を担います。
コンフリクトマネジメントのメリット
課題を早期に発見できる
意見の違いが表面化することで、情報共有の不足・役割分担の曖昧さ・業務手順の問題・人員配置など、組織が抱える課題を発見できます。対立を「人間関係の問題」として終わらせず、組織改善の入口として捉えることが重要です。
多様な専門性を意思決定に活用できる
医療現場では職種によって患者様から得られる情報や判断の視点が異なります。異なる視点・意見を排除するのではなく、それぞれの専門性を意思決定に活用することで、単一の職種では見落としやすいリスクや選択肢を把握できます。
相互理解と信頼関係を深められる
対話を通じて相手の役割や判断の根拠を理解すると、「自分と違う考え」ではなく「異なる専門性からの意見」として受け止めやすくなります。これは多職種間の相互理解や信頼関係の形成につながります。
組織の学習と改善につながる
同じ対立が繰り返される場合、個人の問題ではなく仕組みそのものに原因がある可能性があります。コンフリクトをきっかけとして業務手順・会議方法・情報共有・役割分担などを見直すことで、組織全体の改善に繋げる事ができます。
医療現場でコンフリクトが起こる要因
医療現場のコンフリクトは一つの原因だけで生じるとは限りません。実際には、条件、感情、認知という三つの側面が重なって発生することがあります。リーダー・管理者は、表面的な言動だけではなく、「何が対立しているのか」を整理し分析する必要があります。
条件の対立
条件の対立とは、時間・人員・役割・業務量・治療方法・ケア方針・優先順位など、具体的な条件について意見が一致しない状態です。例えば、業務負担や人員配置に対する認識が異なる場合、職種や役割の違いから業務の優先順位が変わる場合、治療と生活支援のどちらを優先するかについて意見が分かれる場合などがあります。
条件の対立では、感情だけを取り上げるのではなく、実際の業務量・役割・時間・患者様の状態など、確認できる事実を客観的に把握して整理することが重要です。
感情の対立
感情の対立とは、不信感・怒り・失望・緊張・過去の経験などが現在の対立に影響している状態です。例えば、「以前も自分の意見を聞いてもらえなかった」という経験があると、現在の小さな意見の違いが大きな対立につながることがあります。
感情の対立に対して、正論だけで解決しようとするとさらに関係が悪化する可能性があります。まず相手が何を問題と感じているのかを確認し、感情の背景を理解する姿勢が重要となります。
認知の対立
認知の対立とは、同じ出来事を見ていても情報の受け取り方や解釈・前提となる知識や経験が異なることで、異なる判断に至る状態です。例えば、指示の内容や緊急度について職種間で認識が異なっている場合などです。
認知の対立では誰が正しいかを決める前に、「何が事実として確認できるか」「どの情報が共有されているか」を整理する必要があります。
コンフリクトマネジメントが重要な理由
円滑な多職種連携につながる
医療は一つの職種だけでは完結しません。異なる専門職がそれぞれの視点を持ち寄るためには、意見の違いが生じた際にも対話を続けられる関係性が必要です。リーダーは対立する意見を抑えるのではなく、専門職が安全に意見を出せる環境を整える必要があります。
医療安全につながる
医療安全のためには、疑問や懸念を立場に関係なく表明できることが重要です。「反対すると関係が悪くなる」と感じる職場では、リスクに気づいても発言を控えてしまう可能性があります。建設的な意見の違いを認める文化は、リスクの早期発見・早期対応にもつながります。
スタッフの心理的安全性を高める
心理的安全性とは、チーム内で疑問や懸念・意見を表明しても過度な否定や不利益を受けずに安心して発言できる心理状態です。リーダーが異なる意見を尊重し、発言内容と発言者を分けて扱うことで、スタッフが意見を発信しやすい環境をつくることができます。
患者・家族への支援の質を高める
患者様・家族様への支援では、治療だけでなく生活・家族関係・退院後の環境・本人の希望など、多面的な視点が必要です。多職種が異なる視点を持ち寄り、必要な対話を行うことで、患者様・家族様にとってより適切な支援方法を検討する大切な材料となります。
コンフリクトマネジメントの実践方法
事実と認識を分けて整理する
対立が起きた際はすぐに結論を出すのではなく、「実際に起きた事実」と「それぞれがどう認識しているか」を分けます。事実確認が不十分なまま判断すると、誤解を前提として議論することになります。
双方の立場・背景を確認する
それぞれの職種には異なる責任と専門性があります。リーダーは双方の話を聞き、なぜその判断に至ったのか、どの情報を重視しているのかを確認します。相手を説得するためではなく、双方を理解するために聞く姿勢が重要です。
共通する目的を確認する
対立している双方にも、「患者の安全を守る」「患者にとってより良い支援を行う」「チームとして適切に業務を行う」といった共通目的があります。意見の違いだけに焦点を当てず、共通する目的を確認することで、対立を問題解決へ転換しやすくなります。
選択肢を出し、合意形成を行う
双方の意見を確認した後、複数の選択肢を検討します。リーダーが最初から答えを決めるのではなく、関係者から代替案を出してもらうことも重要です。患者への影響・医療安全・実現可能性・職員の負担などを踏まえて、チームとして実行可能な方法を選択します。
実施後に振り返り、チーム改善につなげる
合意した時点で終わりにせず、実施後に「うまくいったか」「新しい問題は生じていないか」「同じ問題を防ぐために何を変えるか」を振り返ります。個別の対立解消を組織学習につなげることが、マネジメントの上で重要となります。
リーダー・管理者に求められるコンフリクトマネジメント
コンフリクトマネジメントとは対立した職員の間に入り単純に仲裁することだけではありません。コンフリクトをチーム改善の機会として捉え、対話と意思決定を支援し学習へと繋げることが重要となります。
中立的に状況を整理する
自分自身の先入観や役職上の立場に引きずられず、事実・意見・感情を分けて整理します。「誰が悪いか」よりも、「何が起きているのか」を客観的かつ明確に把握することが第一歩です。
発言しやすい環境をつくる
役職や職種に関係なく疑問や懸念を伝えられる文化をつくり、反対意見を「協調性がない」と決めつけず、リスクや改善点を示す情報として扱うことが重要です。
共通目標にチームを戻す
対立が激しくなると自分の職種や自分の正しさに意識が向き、視点がズレやすくなります。そこでリーダーは、患者様や家族様へのより良い支援・医療安全・チームとしての成果など共通の目的に視点を戻すよう誘導することが大切です。
個人の問題と組織の問題を分ける
同じ対立が繰り返される場合は、個人の性格や相性だけを原因とせず、業務手順・情報共有・役割分担・人員配置・意思決定の仕組みなどの要素に分けて検討します。
コンフリクトをチーム改善につなげる
解決した事例は個別対応で終わらせず、会議方法・情報共有・教育・業務ルールなどに反映し、コンフリクトを組織学習へ変換することが管理者としての重要な役割です。
医療現場における具体例
事例1:医師と看護師で治療・ケア方針の認識が異なる場合
医師は治療継続を優先し、看護師は患者の苦痛や生活上の負担を強く懸念しているケースを想定します。この場合、どちらか一方を正しいとするのではなく、患者の状態、治療上のリスク、患者本人の希望、家族の意向、生活上の負担などを整理します。その上で、「患者にとって何を優先するのか」という共通目的を確認し、複数の選択肢を検討します。リーダーは、それぞれの専門性から得られた情報を統合し、チームとして意思決定できる場をつくります。
事例2:スタッフ間で業務負担への不公平感が生じた場合
「特定の職員に業務が偏っている」という不満が出た場合、まず感情的な訴えを否定せず、担当患者数、業務内容、勤務状況、時間外業務などの事実を確認します。その上で、役割分担や業務手順、人員配置に問題がないかを検討します。個人間の不満として処理するのではなく、業務を見える化し、必要であればチーム全体の業務設計を見直すことが重要です。
事例3:患者・家族への対応方針が一致しない場合
患者本人の希望と家族の希望が異なり、スタッフ間でも対応方針が分かれる場合があります。このときは、患者本人の意思、家族の意向、医学的情報、生活背景などを整理し、何が確認できていて、何が不足しているのかを明確にします。その上で、患者本人にとって何が重要なのかを共通の軸として話し合います。リーダーは、意見をまとめるだけではなく、意思決定のプロセスそのものを整えることが重要です。
まとめ
コンフリクトは多職種が異なる専門性や価値観を持って協働する以上、完全に解消することは困難です。しかし適切にマネジメントすることで、課題の早期発見・多職種連携・医療安全・心理的安全性・患者様や家族様への支援の質の向上につなげる大切なチャンスとなります。
コンフリクトマネジメントは対立を収束させるためだけの技術ではなく、異なる専門性を持つ職員が互いの意見を尊重し、患者様・家族様にとってより良い医療を実現するための、リーダーシップ・マネジメントの重要な機能の一つですので、上手く活用して、患者様へのケアの向上はもとより、職員がお互いに尊重し合える職場づくりに役立ていきましょう。
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